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INSIDE ATOMIC
ATOMIC JAPAN TEAMの躍進
2月8日から21日にかけてイタリアのコルティナダンペッツオを舞台に、長期スケジュールで開催されたアルペンスキー世界選手権。コロナ禍の寂しい国内に、イタリアから嬉しい知らせが届きました。
男子GS競技では、1985年に岡部哲也さんが出した20位という記録以来、36年もの間成し遂げられながった20位以内の壁。その歴史の殻を破り、加藤聖五選手(野沢温泉スキークラブ)が18位に飛び込む大快挙を成し遂げたのだ。
現在のJAPAN TEAMにおいては、W-CUPという世界最高峰の舞台でGS競技を戦うのは加藤選手ただ1人。
孤独な中でも着実なレベルアップが見えるシーズンをスタートさせていた。
W-CUPでは、2本目進出となる30位に手がかかるリザルトを残しながらも、そこにもまだ一つの大きな壁がある。
そんな加藤選手ですが、世界選手権直前のドイツのBerchtesgadenで行われたヨーロッパカップでは、トップとのタイム差を1秒以内にまとめる18位でFINISHしたという期待に胸躍らせるニュースが舞い込んできました。
ヨーロッパカップと言えど、ここに参加した選手たちはW-CUPでも上位に位置するポイントを持つ猛者たちが集まるレース。ここで見せた加藤選手の2本目の滑りは、なんと4番タイム。本人にとって最も良い状態で世界選手権を迎えることができたのだ。
疲労感も当然あった中でも、世界選手権でのベストリザルト。着実に一歩一歩世界のトップシーンで戦う準備を整えている加藤選手。よりいっそう今後の活躍に期待がかかります。
加藤選手の快挙があった翌日は女子SL競技。
加藤選手の勢いそのままに、今度は女子のエース安藤麻選手(日清医療食品)が、オリンピック、世界選手権を通じて女子技術系種目では過去最高となる10位を記録しました。
1本目、中間タイムでは少し遅れをとったものの、FINISHラインに飛び込んできた安藤選手は8番手のタイム。
中継カメラを前に喜びを爆発させた。TVの向こう側で同じように鳥肌を立てて喜んだ人も多いのではないでしょうか。
1本目をシングルで迎える、今までに味わったことのない緊張感に包まれた2本目。順位は2つ落としたものの、あの場面で、初めての経験で、トータル10位にまとめ上げた実力と精神力は流石です。
信頼する工藤昌巳コーチと二人三脚で、世界を転戦しながら選手活動を続ける安藤選手。
今シーズンのW-CUPでも、自身の最高位となる15位を記録するなど、昨年以上にコンスタントにポイントを獲得している安藤選手。まずは直近のクリア目標としているW-CUP最終戦出場(ポイント25位以内)に向けて、これからも頑張って欲しいです。
得意不得意がはっきりしていて、そこを工藤コーチと一戦一戦修正しながらこの位置まで登ってきました。
私たちは、安藤選手が世界の舞台で表彰台を掴む日を期待して、これからもサポートしていきます。
国内では、「日本一を決める戦い」全日本選手権が開幕。
世界選手権組は除くものの、名実ともに日本一を決める大会が全日本選手権です。
国内屈指のハードバーンで知られる国設阿寒湖スキー場を舞台に開催されるも、突然の降雪に見舞われ状況は一転。夜通しコーチや運営関係者によって排雪作業とインジェクション作業(水入)が行われ、日本一を決める戦いの舞台をなんとか維持することができた。
レースシーンは、こういった努力の元に成り立っている事を多くの皆様に知っていただきたい。
関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
当大会で奮起したのがベテラン湯淺直樹選手(シーハイルアカデミー)。
本来この時期までには、ヨーロッパ各国の転戦記録がもっと情報としてあっても良いところだが、このコロナ禍の状況でTEAMとして転戦し、国をまたぐ度に受ける隔離という時間にトレーニングを裂かれるのはもったいないと、TEAM湯淺は国内で黙々と調整を続けた。
今思うと、突然ユースの大会へ飛び込み前走にやってきたのも、社会人向けのローカルレースに前走でやってきたのも、本人にとっては大事な調整の一部だったのかもしれない。
湯淺直樹は本当に速いのか、が問われた1本目。
ゴール前の振り幅が大きいポイントでスキーが止まりそうになるほどのタイムロス。それでもゴールした時点では先に滑った塩入選手に1.38秒差と大きく差をつける驚きのタイム。その後湯淺選手を超える選手は現れなかった。
湯淺選手が1本目ラップで迎える2本目のスタートを見るのは久しぶりではないだろうか。
2本目は同じくベテランの域に入ってきた成田秀将選手が良い滑りを見せ、湯淺直樹選手を待ち受ける展開。
見ている側がドキドキするも、決して危なげのあるような滑りではなく、ベテランならではの安定感と安心感、そして、「やっぱり湯淺直樹は速い」と強く印象づける滑りでフィニッシュへ飛び込んできた。
結果としては、2位に1秒以上の差をつける快勝。年齢を感じさせない、いや年齢を重ねたからこその速さを持っている湯淺直樹を見せつけてくれました。
ゴール後のインタビューで初めて明かした「ニュー湯淺直樹」にまつわる秘話。
2019年に今後の競技人生をかけ、思い切って受けた人工膝関節手術。ニュー湯淺直樹として歳を重ねてもなおスストイックに戦い続ける姿、そしてきっちり勝てる力は、若い選手たちに響いたのではないでしょうか。
また世界の舞台に戻ってくる湯淺選手に期待しましょう。
そして今回の全日本選手権で存在感を大きく見せつけたのが、ATOMIC TEAMにとってもニューカマーの相原史郎選手(東海大学)。
実はトレーニングでは、湯淺選手より速いタイムで滑る事も多く、ひょっとしたらと私たちも期待していた選手です。
ポール際に厳しくねじ込んでくるアグレッシブな滑りが特徴の相原選手は、1本目湯淺選手から遅れること0.64秒差の2位。湯淺選手から1秒差以内で1本目を終えたのは相原選手だけです。
2本目は少し緊張感があったのか精彩を欠いた部分もありますが、それでも若手としては圧倒的なパフォーマンスを見せてくれた立派な3位表彰台です。
底抜けに明るい性格から、自身のYoutubeも最近話題になっていますが、スキーヤーとしての実力は間違いなく本物であると証明できた大会となりました。
女子では、国内ATOMIC TEAMエースの若月新選手(東海大学)に期待がかかりましたが、失敗が続きSL競技の8位が最高順位となりました。全日本前の学生選手権で優勝していただけに非常に残念ですが、間違いなく国内トップ選手の1人です。結果を残して世界への扉をこじ開けて欲しいです。
大幅なスケジュール変更もあり、選手たちは調整に悩まされたところもありましたが、国内でもこういった日本一を決める大会が4種目きちんと成立できたことに対し、心より感謝申し上げます。
ATOMIC TEAMからは、これからどんどんと世界で戦える選手が出てきます。
ベテランから若手まで、そしてユース世代の選手も含め、ワンチームで戦っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします。